白鳥エステに行く前と後について記事を書きました。

【白鳥エステ その1】60分3000円のエステが気になるのでググってみた話(まだ行ってない)

【白鳥エステ その2】60分3000円のエステが気になるので行ってきた話(遂に行った)

 

今回はおまけ編で完全に私の趣味として、タイトルの通り「イノベーションの知覚属性」を用いた分析をしたいと思います。(無職某、金はないけど時間と知識っぽいものがある。)

今から長々と分析をしますが、結論を超手短に言うと、

イノベーションの知覚属性をもとに分析した結果、技術力を大前提とした上で、

損して(破格の低料金)得とれ(破格の低料金に伴うクチコミ)が成功の要因ではないかということです。

(言わずもがなであるが、フレームに当てはめて検討する取り組みが大事。知らんけど。)

似たような事例として脱毛サロンのミュゼが想起されますが、

ミュゼは広告を打ちすぎて1度ミスをしているので(あとで詳しく書きます)、ミュゼと同じ轍を踏むことはない美容業界のイノベーター的存在と言えるのではないでしょうか。

書いておいて何ですが、「3.イノベーションの知覚属性を用いて白鳥エステとミュゼを比較分析する」から読んだら良いと思います

1.『イノベーションの普及』について

先に、エベレット・ロジャース『イノベーションの普及』という書籍をご紹介します。

本書は初版刊行時から40年を経て現在第5版、5,000以上の文献の分析を重ね、最新の研究やトピックを盛り込み、「イノベーションはどのように伝播していくのか?」という問いに理論的かつ経験的に解明する。コミュニケーション、マーケティング、コンピュータ・ネットワークの社会的利用、開発経済などの基礎理論を知る上で必携の書である。新技術、新製品、新ライフスタイルなどのイノベーションは社会に新たな選択肢や手段を提供することで「不確定性」を増大させる。インターネットや情報機器はどのように流行し、そして世界的なテロ行為はどのように伝わっていったのか。このような新たな不確定性に対処するために、人々は「情報探索」を行なうように動機づけられるのである。

簡単に言うと、「イノベーションはどのように伝播していくのか?」について多角的に事例を交えながら解説している本です。

ここで言うイノベーションとは、たまごっちやAKB48が流行ることでも良いし、車を購入することや何らかの啓発キャンペーンの効果でも良いです。今回はこのイノベーションの普及理論を、白鳥エステというイノベーションがどのように普及しているのかを分析するために用います。

2.本題、「イノベーションの知覚属性」について

『イノベーションの普及』の中で、紹介されているもののひとつに「イノベーションの知覚属性」があります。

個人によって知覚されるイノベーション特性はそれの採用速度を説明するのに有効である。

(中略)

相対的優位性・両立可能性・③試行可能性、そして観察可能性については高く、複雑性については低いと知覚されるイノベーションは、そうでないイノベーションよりも速やかに採用される。過去の調査によると、これら5つの属性はイノベーションの採用速度を説明する際に最も重要な特質であることが示されている。(斜体部分は筆者による加筆)

簡単に言うと、イノベーションについて、①相対的優位性・②両立可能性・③試行可能性・④観察可能性・複雑性という5つの評価軸を用いて、比較分析ができるという提案です。

格闘ゲームのキャラクタを①強さ・②操作しやすさ・③必殺技発動の難しさetcといった観点から分析できるという感じでしょうか。

続いて、5つの知覚属性について解説します。

注釈ではそれぞれ器械体操を具体例に挙げて説明しています。

①相対的優位性*1

あるイノベーションがこれまでのイノベーションよりも良いと知覚される度合いのことである。相対的優位性は経済的な観点で表されることがあるが、それに加えて社会的な威信、便利さ、満足感なども重要な因子である。
(中略)
イノベーションが十分な「客観的」な優位性をもっているかどうかはあまり重要ではない。

②両立可能性*2

潜在的採用者がもつ既存の価値観や過去の体験そしてニーズに対して、あるイノベーションが一致している度合いのことである。

③試行可能性*3

イノベーションを理解したり使用したりするのが相対的に困難であると知覚される度合いのことである。

④観察可能性*4

イノベーションが小規模にせよ経験しうる度合いのことである。新しいアイデアを分割して試行できる場合、そのイノベーションはそうでない場合より早く採用される。

複雑性*5

イノベーションの結果が他の人たちの目に触れる度合いのことである。個人にとってのイノベーションの結果を観察するのが容易であればあるほど、イノベーションを採用しやすくなる。採用者の友人や隣人がイノベーションについての評価情報を求めるほど、可視性は新しいアイデアに対する仲間内の話し合いを促す。

3.イノベーションの知覚属性を用いて白鳥エステとミュゼを比較分析する

私が思いつく、手っ取り早く比較できそうなのがミュゼだったので、ミュゼを使います。スマン、ミュゼ。

ミュゼについては、「なんか一時期倒産するっぽかったけど持ち直したっぽい・・?まだ広告してはるし。」がなんとなくの印象ではないでしょうか。私の理解としては、CMや電車広告で広報費を使いすぎた結果、一時的に資金繰りがショートしたという理解です。*6

①相対的優位性:非常に高い

既存のイノベーションよりも良いと知覚される度合いについては、特に経済的な観点(既存の料金体系をぶっ壊す60分3000円)からも明らかです。

<ミュゼの場合>、ミュゼも低料金を謳っていますが、1回目のカウンセリングで料金体系の説明があるとは言え、誇大広告めいたものも見受けられるので、安直に相対的優位性が高いとは言い切れません。

②両立可能性:高い

既存の価値観との一致については、私の観測においては、エステに行くことは悪ではないと認識されているように思います。あえて挙げるなら、エステに通える人はお金があって羨ましいという嫉妬みたいなものでしょうか。

<ミュゼと比較>しようと思いましたが、これについては特に相違はないように思われます。脱毛=ちょっと怖い という認識があるくらいでしょうか。

③試行可能性:低い

イノベーションの理解(エステ=( ・∀・)イイ!!)は問題ナシですが、イノベーションの使用に際して2つのハードルあるように思われます。

1つ目ははじめの一歩を踏み出すハードル。聞いていて気になっている状態と1度体験した状態というのは大きく違います。1回目の体験に至るためのトリガーは人それぞれですが、コンビニでお菓子を買うよりもハードルが高いことは確かです。このハードルを下げる方法としては、絶賛開催中のお友達紹介キャンペーンが該当します。

そして、1つ目のハードルを越えたあとに2つ目のハードル、予約の難しさ

大量生産大量販売とは異なり、1人の施術者と1人の客で成り立つ販売形式のため、予約の難しさがあります。一般的な休日である週末の予約から埋まること、そして人気の施術者の方の場合は平日含めて予約が難しいであろうことが予想されます。

これら2つのハードルが試行可能性を下げている要因であると言えます。

<ミュゼと比較>しようと思いましたが、これについては特に相違はないように思われます。

④観察可能性:普通

イノベーションが小規模に経験、あるいは分割して体験しうる度合いのことですが、1回ずつ単発で利用ができるため小規模体験が可能です。しかし、前述の2つ目のハードルの通り、体験への難しさがあります。

(かといって、無理な拡大によって受け皿を大きくしてもサービスの低下を招くため難しいところです。)

<ミュゼの場合>、ミュゼは単発の体験ができないため観察可能性が低いように思います。コース契約後、誕生日に別部位の体験クーポンなどは配布されますが、契約前の単発体験はありません。サービスの性質上、回数を重ねて効果を発揮していく(と謳っている)ため、小規模な経験の提供自体が不可能な状態である部分が大きく影響しています。

⑤複雑性:非常に低い(良いこと)

エステに行った結果(効果)が他の人たちの目に触れる度合い。これについては、エステに行った当人がエステに行っていることを他人に秘密にしていたら、エステとその効果が他人に知られることはありません。

しかし、白鳥エステはクチコミを通じて気になって体験→自分もクチコミ(体験報告)をするというハッピーサイクルがうまれています。そのため、白鳥エステに通っていることを隠す人よりも行ってきた報告をする人のほうが多いという特徴は複雑性を下げることに大変役立っていると言えます。

<ミュゼの場合>、あくまで私の主観ですが、「ミュゼ行ってきたよ\(^o^)/」ってわざわざ呟く人はそう多くないのではないかと思います。脱毛行ってきたvsエステ行ってきた だと、なんだか響きが違います。また、効果(脱毛具合)を実際に目にする機会というのもそうそうないため、効果が他人にわかりにくいという性質があります。

分析まとめ

料金を爆裂に安くすることで①相対的優位性が高くなっています。

しかし、それに伴って③試行可能性が低くなるというジレンマも生じています。

このジレンマを⑤複雑生の低さ(クチコミのすごさ)が上回るか否かが気になるところです。

これらを一言でまとめると、最初に述べた「損して得とれ」戦略になります。

美容業界という特殊性(ギャンブルは一般的によく思われないけど、エステという響きはすでに正義という雰囲気がある)に安さをぶつけた結果、どのような方向に発展していくかがとても気になります。

4.勝手に今後の戦略を考える(マジ迷惑)

これまで述べてきたイノベーションの知覚属性からは少し離れます。

エステというサービスは消費型サービスです。

消費型サービスとは、スポーツ観戦やライブ鑑賞など、現地で消費してくる(帰宅後手元にモノが残らない)ものです。

もちろん、現地消費で満足するから購入しているわけですが、人間なにかしらの消費した履歴を残したくなります。そこで、ユニフォームやライブグッズなどのアイテムを買って帰るわけです。

白鳥エステで、施術してきた人がホワイトボードをツイッターにアップする心理の一因とも捉えられます。

(私然り↓)

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これを踏まえると、ホワイトボードの他には、白鳥エステグッズ作成が挙げられます。そしてこれの前後でブランディングが必要になります。ロゴを始めとしたHP等全てのアートディレクションです。(ここにお金をかけていないから結果的に安い料金体系が成り立っているというジレンマもあるはず。)

 

ミュゼは全国に店舗を増やして顧客を増やす(捌く)戦法ですが、これは白鳥エステの1対1で提供しているサービスとは種類が異なります。

となると、昨今注目されている個人のブランディングが必要になります。(白鳥エステでは既に施術者の方がそれぞれツイッターをされているので、ブランディングはしやすいと考えられます。)

企業に属しながら、個人というブランドも磨いていく必要があります。技術力が確かであるという前提もありますが、同じコースを誰から受けるのかということさえもブランドになる可能性があります。企業というブランドと個人というブランドがwinwinの関係を保ちながら普及していくことが最強なのではないでしょうか。

・・・無職が調子乗って書きすぎました。恥ずかしいので太字は使わず、文字サイズは小にしておきます。(でも載せる。)

 

5.まとめ

私個人の見解をつらつらと書き綴りました。

白鳥エステの回し者でもなく、ミュゼに親を殺された者でもありません。

(なんならミュゼの会員です。)

ただ単に、長々とアカデミックめいた文章が書きたかったこと、その事例として認知度が高くイノベーター的存在である白鳥エステが適していたという理由です。

参考文献?事例研究?データや表?論文じゃないのでご勘弁を。

おそまつさまでした。

*1:なんかイイなと感じられる度合いのことです。ここで言う「イイ」とは、「ランニングよりも器械体操のほうが運動量多くて痩せそうでイイな」でも、「オリンピック見てたらなんかかっこよくてイイな」でも、なんでもオッケーです。説明にもある通り、客観的なデータに基づくと言うよりも、個人的に(他のものよりも)気になると感じる度合いです。

*2:既存の価値観という観点から考えると器械体操のみならずスポーツ全般が善とされている傾向があるので(相撲云々やレスリング云々は除く)、スポーツ自体の両立可能性は高いと言えます。義逆にギャンブルや贅沢品の収集などは、個人の価値観や過去の体験等によって異なると言えます。

*3:説明のとおりです。器械体操を例にあげると、器械体操を知っていても体験する場所は少なく、床でバク宙をしているところや平均台でバク転をしているところを見て「私にもできそう」と感じる人はそう多くありません。加えて、ボール1つで楽しめるサッカーと異なり、練習できる場所も限られています。器械体操は他のスポーツに比べて試行可能性が低いスポーツと言えます。

*4:「観察」と言っているのに、「体験しうる度合い」を意味しているのは些か疑問に残りますが、筆者がこう言っているのでこのとおりです。器械体操を例にあげると、「体験しうる度合い」は大変低いと言えます。体育の時間のマット運動くらいではないでしょうか。サッカーや野球は随分と身近なスポーツであり、プレイするにあたって必要なものが少なく、環境が整っています。それらと比べると、器械体操は観察可能性が低いスポーツと言えます。

*5:複雑性は前述のとおり低いほうが良いとされています。つまり、複雑ではない(原因と結果がわかりやすい)と感じられる方が良いということです。器械体操を例にあげると、試合風景についてはスポーツニュース等で見ることはありますが、身近で練習風景を見たり体験談を聞いたりすることは少ないように思います。また、器械体操に限らず、イノベーションの結果の観察が容易であることの最たる例はオリンピックなどの世界大会レベルの試合で優勝してメディアに取り上げられた時であるため、オリンピック種目に採用されているものや良い成績を残してメディアに取り上げられやすいものがスポーツの中では複雑性が低いと言えます。

*6:以下のページを読むに、「任意整理手続き(一部の借金免除、返済の期日延長)を行って、別会社に脱毛事業を全て引き渡した」というのが顛末のようです。

ミュゼが倒産するって本当?法律家にインタビューしてきた

破産ではなく任意整理手続きとなった理由としては、今後の収入の見通しはあるがすぐに借金の支払いに使える現金がないためです。CMや電車広告などの全力の広告、全身脱毛など高額コースについては分割払いができる・・・ということを考えると、広告にお金をかけすぎていることが原因のひとつであったように思われます。(いまだに広告しているということはどういうことなのか。)




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